こんにちは、タナカ企画の田中です。
2025年もまもなく年末年始が近づいてまいりました。
長期休みや季節の節目が近づくと、営業現場の空気感にはある種の特徴的な「諦め」が漂い始めることもあるのではないでしょうか。
数字の進捗を確認すると、決まって返ってくるのはこんな言葉。
「この時期はアポ取れないんで、仕方ないですよね」
「担当者が不在がちなので、休み明けに集中させます」
「決裁フローが止まっている時期なので、今は待ちです」
……いかがでしょうか。
確かに、これらは嘘ではありません。
現場で受話器を握っているメンバーからすれば、肌感覚として「断り文句」が増えるのは事実でしょう。
しかし、私がプロの営業支援の立場から最も危惧するのは、
“事実”を理由にして
“思考停止”が組織に常態化すること
です。
「取れにくい」という前提で運用そのものを止めてしまう。
止めると活動のリズムが崩れ、スキルも鈍る。
リズムが崩れるから、「本来取れるはずのアポ」にエンジンがかからず、余計に取れなくなる。 そしてまた「やっぱりこの時期は難しい」という言葉で片付けてしまう。
この負の循環に陥ると、営業組織の成果はつねにカレンダーという「自分たちでコントロールできないもの」に振り回され続けることになります。
今回の記事では、その「口癖」を構造的に分解し、運用の打ち手としてどう昇華させるべきかを解説します。
1. 本当に“時期のせい”なのか?案件の「波」を構造で理解する

商材によって「取れにくさ」や「波」が存在するのは事実です。
しかし、理解しておくべきは「取れない」のではなく、正確には“顧客が動く理由(刺さる理由)が変わる”という現象が起きているだけだということです。
長期休み前後や年度切り替えなどで波が出やすい商材には、パターンがあります。自社の商材がどこに当てはまるか、改めて整理してみてください。
① 物理的な季節課題に紐づく商材
これらは季節そのものがニーズの源泉です。
- 熱中症対策::5月〜8月がピーク。冬場にアポを取るなら「来期の予算確保」という文脈が必要。
- 感染症対策(衛生・換気・消毒・医療/介護関連): 流行期の前と最中で、アプローチの緊急性が劇的に変わる。
- 防災(台風・豪雨・雪前の備え、備蓄品、BCP): 災害が起きる前は「備え」、起きた後は「復旧・対策」へとニーズがスライド。
- 電力ピーク/節電(夏冬の電気代、デマンド管理): 請求書の金額が跳ね上がるタイミングこそが、最も話を聞いてもらえる時期。
② “人が動かない”時期に影響される商材
- 採用(繁忙期・内定期・新卒切替): 採用担当者が面接で手一杯の時期に「媒体の案内」をしても、物理的に時間がない。
- 研修/人材育成:4月の新入社員研修、10月の中堅研修など、予算執行と実施タイミングに波がある。
- 施設/店舗運営:商業施設が書き入れ時の連休中に、店長や施設管理者に電話をしても、まず捕まらない。
③ “予算・決裁・締め”に左右される商材(BtoB SaaSに多い)
- セキュリティ系、情シス向け(監査・更新・年度予算): 監査対応で忙殺されている時期は、新しいシステムの検討は後回しになる。
- 経費精算/請求書/契約管理:月末月初や決算期の「締め作業」が重い時期は、事務方の手足が止まる。
- ERP/基幹システム:検討期間が1年以上に及ぶことも多く、稟議タイミングを逃すと「また来年」になりやすい商材。
④ “法改正・制度・補助金”で動く商材
- インボイス/電子帳簿保存法などの法対応:施行直前はパニック的に需要が増えるが、施行後は一気に落ち着く。
- 補助金・助成金を絡めた設備投資:「締切」という絶対的な期限が存在するため、その前後で活動量が極端に変動。
⑤ “イベント・展示会・繁忙期”がトリガーになる商材
- 展示会出展支援、リード獲得支援:会期直前は準備で忙しく、会期直後はリード対応で忙しい。
- 旅行・宿泊・飲食向け:業界の繁忙期(大型連休など)は担当者へなかなか着電しない。
このように、波が出るのは自然なことです。
しかし、ここで強調したいのは、波があるからといって「活動を止めていい」ということではない、という点です。波があるなら、その波を前提とした「運用の設計図」を書き直せばいいだけなのです。
2. それでも「取れるタイミング」は必ずある

「取れない=ニーズがゼロ」ではありません。多くの場合、“ニーズ”はまだ残っています。ただ “商談の理由”が弱いだけなのです。
※こちら商談でも同じことが言えるでしょう。
たとえば長期休み前後の顧客心理はこうです。
- 担当者が忙しい:「休み前に仕事を片付けたい(=今、新しい話を聞く余裕がない)」
- 稟議が回らない:「決裁者が休みに入っている(=今、話を進める実利がない)」
- 返答が遅い:「休み明けに考えよう(=今、急ぐ理由がない)」
ここを「だから無理だ」と諦めて受話器を置くのか、「なら、“今”話すべき理由を作ろう」と切り替えられるのか。ここにプロの差が出ます。
3. アポは「単月評価」で考えると運用が歪む「破綻のスパイラルとは?」

インサイドセールスのマネジメントにおいて、最も陥りやすい「破綻のスパイラル」があります。それが単月数値への過度な固執です。
- 連休などの影響で、単月の数字がガクンと落ちる。
↓ - 電話をしていないマネージャーが焦り「とにかく何でもいいから取れ!」とトークやターゲット、架電量を一気に変えさせる。
↓ - 現場が疲弊し、これまでの勝ちパターンが崩れ、成果がさらに不安定になる。
↓ - 結局、学びが何も残らないまま「時期のせいだ」「架電者のスキル不足だ」と結論づけて終わる。
インサイドセールスという仕事は、本来“慣らして”見なければなりません。 なぜなら、アポの裏には必ず「タイムラグ」が存在するからです。
今日取れたアポは、今日初めてかけた電話だけで決まったものだけではないのではないでしょうか? 「先月の追跡」「先々月のヒアリング」「過去半年にわたるリストの熟成」これらが複雑に絡み合って、今日という結果を生んでいます。
だからこそ、単月のみで評価を完結させてしまうと、本質的な運用の良し悪しが見えなくなります。 運用の正しい問いはこうあるべきです。
「今月は何件取れたか?」だけで指標を見るのではなく、「今月は“未来のアポ”を何件仕込めたか?」です。
4. 「表のシーズン」と「裏のシーズン」を分けて考える

営業活動には、カレンダーとは別に大きく「二つのシーズン」があると考えてみてください。これは感覚論ではなく、成果を出すための「構造」の話です。
- 表のシーズン(収穫期): 顧客の検討意欲が高く、その場で話が刺さり、即アポになりやすい時期。
- 裏のシーズン(耕作期): 顧客が忙しかったり不在だったりして、即アポにはなりにくいが、ヒアリングや情報提供による「仕込み」と「育成」が効いてくる時期。
ここで重要なのは
「裏が表を作り、表が裏を作る」という相互作用です。
表の時期(取れる時期)に、「今すぐアポになる客」だけを追いかける「数だけ取る運用」をするとどうなるか。
裏の時期の種まきが疎かになり、次に裏のシーズンが来た瞬間に崩壊します。
逆に、裏の時期にしっかりと顧客の課題を掘り起こし、信頼を貯金している組織は、表のシーズンが来た瞬間に成果を叩き出します。
つまり、裏をちゃんと作っている組織こそが、通年で安定した成果を出せる「強い組織」なのです。
※優秀な方はこれを隠し玉とも呼んだりされるのではないでしょうか。
5. 取りにくい時期に“止めない”ことが最大の差になる

取りにくい時期に活動を継続することには、二つの大きな戦略的価値があります。
① 数字の損失を防ぐ
シンプルですが、止めた分の数字は「ゼロ」です。
無理のない範囲でも継続していれば、確実にベースとなる数字は積み上がります。
② 学習の損失を防ぐ
取りにくい局面というのは、あなたの会社だけでなく、競合他社も同じように苦戦しています。つまり、ここは「相対的に最も差がつきやすい局面」なのです。
他社が「時期のせいだ」と諦めて足を止めている間に、自社は少しでも継続する。 すると、「今はなぜ刺さらないのか」「今の時期、顧客は何に困っているのか」という生きたデータが蓄積されます。
そのデータをもとにトークを微調整し、改善を重ねることで、休み明けの立ち上がりで競合をごぼう抜きにする圧倒的な差が生まれるのです。
継続は根性論ではありません。
「未来の勝ち筋」を独占するための、極めて合理的な戦略です。
6. 取りにくい時期こそ「見込みリスト」が生きる

「取れない時期」に、新規リストに対してアプローチを続けるのは、精神的にもしんどいものです。そこで重要になるのが、これまで蓄積してきた「見込みリスト」からの転換です。
ここでいう見込みリストとは、単なる名前と電話番号の名簿ではありません。
過去の活動を通じて、
- 何らかの反応があった
- 課題が少しでも聞き出せている
- 「今は忙しいが、後でなら」と言われた
といった温度感が乗った資産のことです。
このリストは、裏の時期にこそ真価を発揮します。
そして、この資産を活かすためには、表の時期(好調な時期)の動き方が問われます。
「取れる時に、取れなくなる前提で情報を仕込んでおく」。
これが鉄則です。
具体的には、電話口で以下のような情報をしっかりCRM(顧客管理システム)に残せているでしょうか?
- 「今は忙しい」→ 「具体的にいつ頃なら、落ち着いてお話しできそうですか?」
- 「今期は予算がない」→ 「来期の予算編成のタイミングはいつですか?」
- 「検討は先だ」→ 「次回の検討開始時期は、具体的に何月頃を予定されていますか?」
これをメモに残しておくだけで、数ヶ月後の「取れない時期」に、そのリストが「今日電話すべき理由のあるリスト」へと姿を変えるのです。
7. 取れにくくなる時期の「NG対応」をデータとして蓄積せよ

不調な時期、取れない時期にこそ、宝の山が眠っています。
それは「勝ちパターン」ではなく、「負けパターン(NG対応)」のデータです。
なぜなら、負け方がわかれば、改善すべき打ち手は自ずと明確になるからです。
- どの切り口(訴求)が、今は刺さらないのか?
- どの業界で、決裁フローがストップしているのか?
- どの役職の人に、この時期電話すると嫌がられるのか?
- どの言い回しが、今の顧客のピリピリした空気を逆なでするのか?
これらを「時期のせい」という言葉で一括りにし、捨ててしまうのは、あまりにももったいない行為です。
他社も同じ条件で苦しんでいるからこそ、「この時期にやってはいけないこと」を組織のナレッジとして持っているチームが、長期的に生き残ります。
8. 「不調期の運用力」が、長期的な成果を決める

インサイドセールスは、100メートル走ではなくマラソンです。
1年を通じて、いかに高い水準でパフォーマンスを維持できるかが勝負なのです。 好調期だけに頼る設計では、部署としての存続は危ういでしょう。
安定した組織には、二つの設計思想が共存しています。
- 好調期の設計:追い風を最大限に活かし、商談数を最大化させ、効率よく刈り取る設計。
- 不調期の設計:向かい風の中でも組織が崩れないよう、リストの質を上げ、追跡を丁寧にし、トークを磨き、次に向けた「学習」と「仕込み」を徹底する設計。
不調期にやるべきことは地味です。派手な成果はすぐには出ません。
しかし、リストを1件ずつ丁寧に精査し、反応データを蓄積し、トークの語尾一つにまでこだわる。
この「地味な運用の積み重ね」が、数ヶ月後に競合との差となって現れるのです。
9. タナカ企画の考える“リスクヘッジ型インサイドセールス”
私たちタナカ企画が提供するインサイドセールス支援は、この「時期の波」を計算に入れた設計を行っています。
- 月ごとのリソース調整:時期による波を読み、攻めるべき時は最大出力で攻め、守るべき時は組織の学習と仕込みにリソースを充てます。
- 「裏のアポ作り」の仕組み化:今すぐのアポだけでなく、3ヶ月後、半年後、未来に実る「商談」を獲得する仕組みを構築します。
- 通年で“慣らした”安定成果:単月の数字に一喜一憂せず、通年で事業計画を達成し続けるための「運用の型」を提供します。
単月の勝負ではなく、通年で成果が安定する持続可能な営業活動を、御社と一緒に作り上げたいと考えています。
おわりに:「取れない時期」は、やめる理由ではなく差をつけるタイミング
長期休み前後は、確かに取りにくいかもしれません。
でも、それは「営業の終わり」ではなく、単なる「局面の変化」です。
局面が変われば、刺し方も変えればいい。
表と裏を使い分け、止めずに継続し、見込みを資産に変えていく。
この運用が身についたとき
「時期のせい」は言い訳ではなく、戦略を立てるための貴重な前提条件になります。
カレンダーに振り回される営業から、カレンダーを味方につける営業へ。
一歩踏み出してみませんか。
それでは実りのある年末年始をお過ごしくださいませ。
今年も1年間お世話になりありがとうございました。
2026年もどうぞよろしくお願いいたします。